第一飛行クラブ 広島 グライダー

この記事は、元自衛隊教官で、長年航空自衛隊に勤務され多くのパイロットを育て上げられた澤井さんに、「これまでの経験を後輩パイロットにぜひ教えていただきたい」とお願いし、特別に寄稿していただいたものです。
現在は、退官され第一飛行クラブ広島で趣味として空を楽しんでおられます。
お忙しい中、記事を書いていただきました澤井さんに深く感謝いたします。
(C) First Flying Club HIROSHIMA  2001

第33回 「宛て舵

1.当て舵

  当て舵という言葉を初めて聞いたのは防大1年生のときですが、これは船舶関係の言葉で左右どちらかに舵を切ったとき舵をそのままにしていたら船体は所望の方向から行きすぎてしまうので使った舵のわずかは元の方向に戻さないとうまく方向のコントロールができないという意味です。飛行機も船と同じで空気と水という流体が相手ですからタイヤで地面に接触している車のようにはコントロールできません。乗艦実習で米軍払い下げのPF(パトロールフリゲート)という小型の駆逐艦に乗って東京湾内で露天艦橋で舵輪を握っていて実際に体験しました。  

2.操舵量

  昭和38年、T−34の教官になりたてのころ民間委託訓練生の訓練の応援に乗ったことがありますが飛行後のブリーフィングで一人の神経質そうな学生が「教官、返し操作のときスティックは何センチ引いたらいいんですか」と質問してきました。唖然として答えに窮しましたがこんな男が何百人ものお客を乗せて空を飛ぶのかと思うと寒気がしてきました。ご存知のとおり飛行機が空中である高度、速度で飛べる姿勢は空力的に一つしかありません。翼の揚力L、機体の重量G、推力T、抗力Dが釣り合って飛行が可能になるわけです。空気密度が小になれば舵の効きは悪くなり、速度が大になれば舵の効きはよくなります。したがってこの状態でのスティックの操舵量は後方に何センチなど表現できるものではありません。

3.ラダー操作

  当て舵とは関係ありませんが返し操作を始めるころにはラダー操作がおろそかになる人が多いようです。プロペラ単発機は速度、高度等飛行諸元が変わるたびに三舵の操作も変わってきます。旧軍パイロットの話ではボールを滑らせていては弾は当たらないとよく言います。ベトナム戦争末期に米軍はロックウェルOV−10ブロンコというターボプロップ双発、双胴の対ゲリラ戦用の攻撃機を作りましたがトルクの影響を最小にするため左右のエンジンの回転を互いに逆にしたという話があります。左右のエンジンの互換性がないためそれぞれに予備のエンジンを持つ必要があり米軍でなければ実現しなかった機体です。機銃の発射にはそれくらい機軸の安定が必要というわけです。ジェット機は速度が速くラダー操作についてはあまりうるさく言いませんが唯一T−33の着陸前、スピードブレーキON、ギャーダウン時にはラダー操作が必要といわれていました。つまり低速、高ピッチ、高出力の時にはエンジンのトルクの影響が出るということです。単発プロペラ機の操縦の大事な要素はラダーコントロールであるということを忘れないでください。


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