第一飛行クラブ 広島 グライダー

この記事は、元自衛隊教官で、長年航空自衛隊に勤務され多くのパイロットを育て上げられた澤井さんに、「これまでの経験を後輩パイロットにぜひ教えていただきたい」とお願いし、特別に寄稿していただいたものです。
現在は、退官され第一飛行クラブ広島で趣味として空を楽しんでおられます。
お忙しい中、記事を書いていただきました澤井さんに深く感謝いたします。
(C) First Flying Club HIROSHIMA  2001

第32回 「奴踊り

1.航空医学実験隊

  東京都立川市にあり、空将を長とする航空自衛隊のパイロットの航空身体検査、航空医学研究等を研究する専門機関です。航空医学とは人間が高所・上空へ移動することによって生ずる医学的な問題を扱う学問であるといわれています。潜水艦では高圧、閉所恐怖症等が問題になるようですが空では低圧、低温、高Gが問題になるわけです。

2.航空身体検査

  航空自衛隊のパイロットの航空身体検査は40歳までは各部隊の衛生隊で行いますが41歳直前の誕生日前1ヶ月には全員立川の航空医学実験隊に集合して検査を受ける必要があります。検査内容は国土交通省が定めたマニュアルどおりで民間と変わりません。前日の午後3時までに着隊して以後係員の支持のまま検査漬けになります。

午前中に一般的検査を終わり午後には平衡感覚劣化を検査する盲目片足自立30秒、呼吸停止50秒という難関が待ち受けています。これが終わると一人ずつ航空医官から最終判断を告げられ合格ならその場で各人の身体歴が返され帰隊できるわけです。ある年芦屋救難隊から一緒に行った部下が青い顔をして「肺に影があるそうで精密検査を指示されました」といって彼は飛行停止になりました。年を取るとこの盲目片足自立30秒、呼吸停止50秒が苦痛に感じられるようになりました。将官や1佐等年齢の高いほどこの課目には苦労していたようです。盲目片足自立30秒は最初目を開けた状態で30秒間立って次の30秒は係員の支持で目を瞑ります。20畳ほどのカーペットの上を片足で倒れないように跳ね回る姿が「奴踊り」に似ているのでこう呼ぶようになったもので、とても人には見せられない姿ですが皆真剣に取り組んでいました。 

3.年を取るということ

  日本飛行連盟の創立メンバーの一人の高橋淳氏は85歳の現在も現役パイロットとして飛んでおられるそうですが年を取ると体力、気力、記憶力等衰えるのは避けられないことです。私は現在71歳ですが視力、握力、皮膚感覚等衰えを感ずることがあります。気持ちの上では昔どおりできる、感覚も鈍っていないと思っていてもやはり何らかの劣化、風化現象は起こっていると思います。それを自覚して状況に応じて的確な判断ができるかどうかが問題だと思います。視力は今でも両眼1.0以上あり、生活には不便はありませんが書類の細かい字を読むときはさすがに眼鏡を使っています。

  ある日、本のページをめくるとき指先の皮膚感覚が衰えたことを知りました。飛行感覚はまだ大丈夫だと思っています。

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