第一飛行クラブ 広島 グライダー

この記事は、元自衛隊教官で、長年航空自衛隊に勤務され多くのパイロットを育て上げられた澤井さんに、「これまでの経験を後輩パイロットにぜひ教えていただきたい」とお願いし、特別に寄稿していただいたものです。
現在は、退官され第一飛行クラブ広島で趣味として空を楽しんでおられます。
お忙しい中、記事を書いていただきました澤井さんに深く感謝いたします。
(C) First Flying Club HIROSHIMA  2001

第29回 「注意分配

先日、自動車運転中の女性が歩道を歩行中の小学生の列に突っ込み重傷を負わせた事故がありました。原因は助手席に乗せた犬に気を取られて前方をよく見ていなかったらしいと報じられました。

1. 注意分配

操縦資格を持つ人あるいは訓練中の人なら注意分配の意味は十分理解していると思いますが私も教官時代はよく学生を怒鳴っていました。三次元の世界で運動するパイロットにとっては当たり前のことですが一般の車の運転者には注意分配の意味がどこまで理解されているか疑問です。一分間に1マイルも移動する飛行機で注意が一点に集中して他のことが全然眼中に無いことは恐ろしいことです。まして運転中に携帯電話を使ったりメールを打ったりすることはとんでもないことだと思います。

  飛行機には少なくとも10個以上の計器があり、姿勢の維持、次の行動の計画、無線  のモニター・チェック、無線への応答、判断等常に複数の情報処理が要求されています。パイロットにはこれらの能力を備えることが要求されそれに応えられなければパイロットとしては失格となりますので訓練でその能力を身に着けようと努力しているわけです。その意味ではパイロットの皆さんは複数の情報処理能力については自信を持ってもいいと思いますが過去の経験が必ずしも将来の安全を保障するものではないということも理解してもらいたいと思います。

2.注意分配の意味

  心理学者の話によると人間の注意集中できる時間はせいぜい15分程度だそうです。飛行中は姿勢。進路の保持、周囲の見張り、計器の監視、無線のモニター、エンジン音のモニター等人間の五感をフルに活用して安全な飛行に努めなければなりません。
一方、免許制度について考えてみれば自動車にしても飛行機にしてもその機材の取り扱いについて最低限の技量を保障しているだけで安全を保障しているわけではありません。自動車学校で注意分配についてどの程度教えているか知りませんが携帯電話や助手席の荷物に注意分配できるほどのことは教えていないでしょう。

  私は昭和29年、高校二年生の夏休みにバタンコ(自動三輪車)で免許を取り、以来54年間無事故で走っています。飛行機も昭和35年に飛び始めて48年間無事故で飛んでいます。車は道路という幅5〜8メートル程度の道路という二次元空間で運行していて緊急の場合ハンドルで方向を変えるかブレーキで止まるかの選択肢しかありませんが飛行機は三次元の空間で行動しているので自由度がひとつ増えます。

  車に乗るとき、飛行機に乗るときは注意分配に努め安全運行に努力してください。

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