第一飛行クラブ 広島 グライダー

この記事は、元自衛隊教官で、長年航空自衛隊に勤務され多くのパイロットを育て上げられた澤井さんに、「これまでの経験を後輩パイロットにぜひ教えていただきたい」とお願いし、特別に寄稿していただいたものです。
現在は、退官され第一飛行クラブ広島で趣味として空を楽しんでおられます。
お忙しい中、記事を書いていただきました澤井さんに深く感謝いたします。
(C) First Flying Club HIROSHIMA  2001

第14回 「アクロバット 3」

.エルロンロール

速度130ノットで約30度ピッチアップした後、素早くエルロンとラダーをうまく使ってできるだけ機首を振らないように機軸周りにロールします。メンターでは速度が遅いので3舵をうまく調和させないと機首が振れて機首下げの状態で終わることが多くなります。この操作は腕力勝負と言われるようにスティックの最後の一押しが足りず、機敏な旋転ができなくて「お前のはバレルロールだ!」とよくからかっていました。

2.バレルロール

ビールの樽の内面をなぞるような軌跡を描くことからこの名がつきました。実際には図のような軌跡を描いていると思われますが、機首を特定の点のまわりに円を描くように回します。エルロンロールよりもゆっくりとした旋転で、図の2の点、頂点では機首の上下をコントロールするのは瞬間的にはラダーですが、3の点では少しバックプレッシャーをゆるめないと過度に機首が下がります。4の点では機首を下げないためには右ラダーが必要です。しかもこれらの操作がスムースに切れ目なくできないとギクシャクしたロールになります。入れ方は、130ノットで約30度機首を上げて左右どちらかにゆっくり旋転に入れます。難度で言えばスローロールの次に難しい操作といえるでしょう。

3.スローロール

私が操縦を始めた昭和38年ころはいわゆる戦前派のパイロット、海軍予科練習生(ヨカレン)、陸軍少年飛行兵(ショウヒ)が飛行隊に何人かいて、時々妙技を見せてもらいました。たとえばショウヒの副隊長は「今からスローロールをやるから計器板の上に手袋を置きなさい」と言っておもむろにスローロールをやってみせますが、その間手袋は動かなかったという伝説がありました。これは機軸の回りにゆっくりとした旋転を行う科目で、バレルロールよりも更に精密な操舵が必要になります。パワーのある飛行機でやるのは簡単でしようが、非力なパワーの飛行機ではすぐ機首が下がります。先輩のやり方をみていると実にスムースに3舵が動き、時には逆操作ではないかと思うようなことがありました。私も何度も練習しましたが、学生にデモできるまでには至りませんでした。背面になった時、マイナスGをかけて機内に溜まっていたゴミや鉛筆、砂などがザーツと顔にかかったことがあります。

4.ボール真ん中

2次世界大戦まではプロペラ戦闘機、朝鮮戦争の末期にようやくジェット戦闘機とヘリコプターが実用化されました。プロペラ機の射撃は機体が滑っていては弾は当たらず、めまぐるしく変化する機体の姿勢と速度に合わせて3舵を調和させる必要があるわけです。ベトナム戦争中に米軍はOV-10ブロンコというターボプロップ双発の対地攻撃機を実用化しましたが、この飛行機のエンジンは左右で互いに回転が逆になっており、トルクの影響を打ち消すことを考えたようです。その代わりエンジンの互換性がないため左右でそれぞれ専用エンジンが必要で、米軍でなければできないことだと思います。しかし戦争の後期にはジェット機にとって代わられてOV-10は短い命で終わりました。機銃による戦闘はすでに過去のもので、敵の後ろに回りこんで打ち落とすという古典的戦法は今ではほとんど見られません。F-86Fには左右3門ずつ、計6門の12.7ミリ機銃が搭載されていましたが、その機銃の軸線は1000フィート先で1点に集中するようにセットされていました。地上で機体をジャッキアップして空中と同じ姿勢にして、弾を発射しナットを回して機銃の軸線の修正をする作業を「ハーモナイゼイション」通称「ハーモ」と言っていました。l0OOフィート以上離れたところで発射しても、また近すぎても射弾は一点に集中せず相手に当たらないことになります。メンターでは垂直尾翼が機体の軸線に対して1度左に振って取り付けてありますので、120ノットの水平直線飛行以外の速度・姿勢ではその影響が出ますからラダーで補正して常にボールが真ん中にあるように操縦しないと弾は当たらないわけです。このようにプロペラ機による射撃には沢山の問題があります。現代の戦闘機は電子機器の発達と誘導兵器の発達により、相手の未来位置を予測してそこに弾を集中させるとか、誘導弾が自身のセンサーで相手を捕らえしつこく追跡する戦法が主流となっています。





















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