第一飛行クラブ 広島 グライダー

この記事は、元自衛隊教官で、長年航空自衛隊に勤務され多くのパイロットを育て上げられた澤井さんに、「これまでの経験を後輩パイロットにぜひ教えていただきたい」とお願いし、特別に寄稿していただいたものです。
現在は、退官され第一飛行クラブ広島で趣味として空を楽しんでおられます。
お忙しい中、記事を書いていただきました澤井さんに深く感謝いたします。
(C) First Flying Club HIROSHIMA  2001

第13回 「アクロバット 2」

1.ループ

T-34のループは水平飛行姿勢から浅いダイブをして150ノットに加速し、翼の水平をチェックしながらスティックを真っ直ぐ膀の方に引きます。始める前に地上の道路とか川とか直線の目標を選んでやらせていますが、何度か繰り返すうちに段々方向が狂ってきて目標と違う方向にゆき勝ちです。これは操縦桿を引く右手が体の右側についているというごく単純な理由によって起こる現象です。この場合「意識して膀の方に引け」と指導していました。ループの頂点付近では首を後ろに傾けて背面での水平線を確認して翼の傾きを修正する必要があります。他人がやっているのを見ていると軌跡は真円には程遠く、縦に長い楕円形になっています。これはパワーの少ない飛行機では仕方ないことで、理論的には頂点では瞬間的にマイナスGがかかるはずです。主翼面積の小さいF-104ではF-86Fのような水平旋回系の空中戦は不利なので主としてバーティカル系の機動で戦っているようです。T-34のループはせいぜい2〜3G程度の重力だと思いますが、学生は感激しています。

2.インメルマンターン

ループの頂点で左右どちらかにロールして水平の姿勢に戻る操作をインメルマンターンと言い、発明したパイロットの名前がつけられたものです。開始速度は160ノットでメンターでは最も大きな速度から始めます。

3.クローバーリーフ

ループの頂点で左右どちらかに90度ロールしてこれを4度繰り返して四葉のクローバーのような軌跡を空中に描く操作を言います。ある日、新着任の第12飛行教育団司令○○空将補が毎日若いパイロットを指名して瀬戸内海の洋上に出たところでおもむろに「それではクローバーリーフをやってみてくれ」と命じ、後席からじっと見ていて着陸後「君のは30度ずれていたね」とやっていました。若いパイロットはその話を聞いて戦々恐々で、指名されないよう逃げ回っていました。

4.スブリットS

水平飛行から左右どちらかにハーフロールを打って、以後はループと同じように操作します。

5.トルクの反カ

メンターのプロペラはパイロットから見て右回りで、機体はトルクの反力で左にロールする傾向があります。大方のパイロットは右ロールをするようですが、実は左ロールの方が機体が回りやすく、私はいつもわざと左ロールから始めています。

6.安定性と操縦性

飛行機の安定性と操縦性(機動性)は互いに反比例の関係にあり、メンターは初級練習機で素人に近い学生を乗せるため安定性を高くするように設計されています。

主翼の上反角が3度くらいだったと思いますが、安定性が高いということは操縦性が低いということで、「どうにもならなくなったら手を離せ」と学生をからかっていました。F-16をベースに日本が開発したF-2は主翼に下反角がついており、最初から安定性を無視して操縦性を追求した飛行機で、フライバイワイヤーという操縦法を採用してパイロットと飛行機の間にコンピューターがあって安定性と操縦性の双方の最大能力を追求した飛行機です。最近生産を終了した純国産のジェット練習機T-4はフライバイワイヤーではありませんが、かなりの下反角がついています。

7.スピン

スピンはどちらかと言えばロール系の機動ですが、紙幅がありますのでここで触れておきます。入れ方はパワーアイドルでピッチ40度を保って完全に失速した瞬間左右どちらかのラダーを一杯踏み込むと簡単に入ります。別名「旋転を伴った悪性失速」と言われていますが、ヒュルヒュルという音をたててゆっくり旋転します。通常2旋転したら逆ラダーを一杯踏み込み、スティックをニュートラルに戻すと旋転が止まります。そこですかさずパワーを出して翼を水平にして終わります。操縦適性検査の最終飛行でスピンに入れ、学生が過度にうろたえないか失神しないか等チェックした時代もありました。

                






















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