第一飛行クラブ 広島 グライダー

第4回 特別寄稿 航法計器について

第一飛行クラブの皆様、私はさすらいの整備士と申します。
この度は第一航空広島事業所の整備士Tさんの特別の計らいでこの様な原稿を寄せさせていただけることになりました。
Tさんからよく聞かされているのですが広島のクラブ員さんたちはとても勉強熱心で飛行機を心から愛しているとのことです。
そのなかでパイロットにとって何か役に立つ整備の話を考えていると言うことを聞き、せん越ながら筆を取らせていただきました。
前回は飛行機の防氷の話しをさせて頂きましたがなにぶん専門外のことでしかも大型機のことだったのであまり参考になら無かったかもわかりません。
今回は色々考えた結果パイロットの眼の次に大切なADF、VOR、DME、その他の航法計器についてお話ししたいと思います。

今日、航空機のアビオニクスの発展は年々進化し、また新しく製造される機体には最先端のアビオニクス(GPS/オートパイロット カップリングなど)が装備されてきている時代でありますが、航法計器として基本となるのはやはりADF,VOR、DMEではないでしょうか。
また、これらをフル活用できればどこにでも飛んで行けると言うのはパイロットの方ならよくご存知のはずです。
今回はこれらの計器を整備サイドでどの程度の許容を持ってチェックされているのかお話しさせていただきたいと思います。
それによって計器と整備の信頼性について考えていただけると幸いです。
なお今回はページの都合上ADFのみの話にさせて頂きます。
VOR,DME、その他については次の機会にお話します。

ADF:AUTOMATIC DIRECTIONAL FAINDER

【自動方向探知機】
ご存知の通り地上NDB局【Non Directional Radio Beacon〔無指向性ラジオビーコン〕】やAMラジオ局など中波および長波の周波数帯の電波を受信し、電波を発振している地上アンテナの方向をADFインジケータや、RMI【Remote Magnetic Indicator(フラックスバルブ〔遠隔磁方位センサー〕からの信号によって回転するコンパスカード上に、ADFの指示を加えたもの)】で表示するものです。
これらのアンテナとなるのが、ループアンテナ〔機体下面のおべんと箱のようなもの〕とセンスアンテナ〔セスナの場合機体背面から垂直安定板に向かって伸びている細いワイヤ〕です。
この二つのアンテナが電波を受信することでガージオイド特性と言う独特の指向性のパターンを作ります(興味のある方は立川整備士に聞いてください)。
電気的にループアンテナを回転させてこのガージオイドの波形が360度回転するような仕組みになっていてヌル点と呼ばれる最小感度のところで電波の到来方向を識別します。
耐空検査では以下の項目について検査されます。
(以下で省略しますが点検の基本としては「航空局が定めた点検実施要領及び製造者の発行した取扱説明書にしたがって点検すること」と定められているのですが、今回は航空局が制定するサーキュラー制度により発行された TCI−6−016−76 無線通信機器検査要領 に沿って説明します。航空機検査官はこれに沿って検査されます。)

地上試験

地上ランナップで行う一般的なチェックです。
(指示、アイデント、ANTモードなど)
ここでは正確な指示測定などは行いません、地上と言うことで電波の反射やその他、指示を狂わせる要素がたくさんあるからです。

飛行試験

気流状態が良いこと、日の出日没の前後1時間くらいは避ける、空電の多い天候の時は避けるなどの注意事項がある。
気流が良くて電波が安定している時に正確なデータが得られるためです。

指示誤差測定

以下についての説明ではヘディングエラーは直線飛行時の指示誤差を示し、8の字飛行では旋回復帰後の指示誤差を示します。
電波の到来方向が正しい位置に指示をしているか検査します。
具体的には「ヘディングエラー」「8の字飛行」を行う。ヘディングエラーはNDBの方向に向いている地上の基準線、例えば鉄道、道路、滑走路等を選び、その基準線にそってNDB方向に機軸を合わせて飛行し、ADFの指示方位を読む。 八尾空港近辺のテストフライトでは兵庫県の和田岬が90度方向の直線ラインでありその直線上にRK:340kHzがあり、多くの会社がこのポイントで測定しています。
8の字飛行はあらかじめ機体をNDB局の方向に向かって飛びそれから左回りに15度(45度)毎にDGを頼りに旋回しその角度の時に1度機体を水平方向に立て直しその時の指示誤差を読んで行く。
左回りに360度、右回りに360度(8の字型に)飛行します。
この測定で肝心な事はパイロットと整備士が息を会わせてテンポよく測定して行くということです。
八尾の会社では家島群島周辺でよくおこなっていました。
この2つの測定で得られるのはADFの指示誤差がどういう形で出てきているかを判断する材料になります。
これらの測定の結果得られた誤差が最終的に全方向で±5度以内に収まらなければなりません。
つまり、ヘディングエラーがたとえば+2度で出ているときには、どの方向に向かって飛んでいても、一様に+2度の誤差が出ます。

反転特性試験

NDB局の真上を通過したらADFの指示はくるりと180度反転するはずです。
これも、フライト試験の対象となります。
「目視によってADFで受信しているNDBの局上を飛行し、指針の反転特性、すなわち指針の反転開始から局上通過までの時間及び指針の反転終了までの時間を測定する。その時の速度、時間を記録する。いったん反転終了したと思われた指針がしばらくすると再び変動することがあるから最終的に指針が安定するまで監視する必要がある。」
オーバステーションをする瞬間は当然NDB局が真下にあるので目視で見ることは出来ませんが、真直ぐに局に進入させて時間的に局の真上にいるということを認識します。
私の経験では関西ラジオ558kHz淡路島のNE(岩屋)に位置する2本のアンテナを2000ftでE方向でチェックしていました。
アンテナ上空では指示が不安定になるので綺麗に180度反転はなかなかしてくれないですね。
アンテナに近付いたら指針がふらふらとゆれ始め、それからゆっくりと反転をはじめふらふらしてから落ち着きます。
確実に反転が終了するまで20秒近くかかることもあります。

ループ回転速度

「直進飛行をしている時有効通達距離のなるべく遠いNDB局を受信しループ回転スイッチによって指針が対NDB局方位の±175°になるように回転させる、次にADF動作により指針が右回りおよび左回りにもとの指示に戻る時間を測定する。この時間は取扱説明書に定められた時間でなければならない。指針が回転する時、引っ掛かりがあってはならない。」
メーカーによって違いはあるがモードセレクタースイッチでループ回転スイッチというものが無いものがあるがADFモードとANTモードの間でノブをホールドするとループ回転するものが多い。
ハンティング指針がある一定の周期を持って小刻みに変動することを言います。
ADFの感度が高いと高周期(速く)、低いと低周期(ゆっくりと)指針が振れます。
「ハンティングは機器の設計によっても異なるが±2°以内のハンティングは差し支えない。指示の読み取りに誤差を生じさせるような大きなゆっくりとしたハンティングは感度不良、又は調整不良と考えられる。」
感度を上げるとハンティングは小刻みに早くなる傾向があり一概に感度が高ければ良いというわけでもない。
地上にいるときのハンティングはあまり参考にならないので飛行時のものをさして言います。

受信音

「有効通達距離内のNDB局の信号を受信した時、識別符号が明瞭に聞こえなければならない。」
受信音がそのまま受信状態を示すのでADFの検査をする時は必ずアイデントを聞きながら行います。
受信音に雑音が入るということはADF信号は非常に弱いレベルの受信と言うことなのでその時の指示は信用できないですね。
場合によっては測定をやり直すことも考えなければならない。
NDB局の近くにいながら受信音に雑音が入る時はまずアンテナのGNDを疑ってみると良いでしょう。
接地不良であることが多い。
雑音が入っている時の指示は信用せずにあくまでも明瞭に聞き取ることの出来る時の指示を信用してください。

ダイヤル周波数確度

「受信し得るNDB局の数局を性格に受信しダイヤルメモリの指示を読む。
NDB周波数との差は取扱説明書に定められた許容値内でなければならない。
デジタル式の周波数選択機能を有するものにあっては、受信し得るNDBの数局が正確に受信可能であることを確認する。」

干渉

「他の無線通信機器等と相互間に干渉が起こらず、異常なく作動していることを確認する。」
航空機内にあるすべての機器類が作動した状態で(飛行中はこの状態。)ADFを操作した時、他の機器に影響が出ないことを確認する。
まとめとしては、ヘディングエラーの修正はループアンテナの取り付け方向を変更することで解消されます。
あと受信感度の調整ですが、感度が高すぎるとハンティングが激しくなり過ぎて指針を読みづらくなり、感度が低すぎると旋回時に指針の追従が悪くなると言った不具合が出てきます。
その他、いろんな要素を考え合わせて皆さんの飛行機のADFは調整されているはずです。

以上が一般的な試験方法ですが、その他装備品メーカーが定める試験があるときはそれに従います
これらの飛行試験を終えて最終的に良否を判定するわけですが、ヘディングエラーにしてもハンティングにしても若干の誤差はあります。
この誤差の範囲内にあれば良ということになります。
ADFはエンルートに使用するばかりでなくコンパスロケーターとして着陸進入としても使用しますが、今回説明したことを念頭に置きながらこれらに活用されるとさらにすばらしい飛行が出来ると思います。
皆さんのフライトに役立てていただければ幸いです。
最後になりましたがこのような原稿を寄せさせていただけた第一飛行クラブの皆様、立川整備士に感謝致します。
また、内容についてのご意見や感想など(あやしい所など)ありましたら立川整備士を通して言っていただければこちらも精一杯善処致します。
次回はVOR、DMEについてお話しします。

第一航空 広島事業所 整備士T & さすらいの整備士

クラブニュース 2000.5月号掲載

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